芳賀書店 シネアルバム43 「マクラクランとスペイダーの世代」より (上下写真とも) 前回、トラボルタの記事でスティーヴン・ソダーバーグの名前を出したところで、ソダーバーグについて思うところを少し。 スティーヴン・ソダーバーグ監督が25歳の若さで自らの体験をもとに8日間でシナリオを書いたという1989年のこの作品。120万ドルの低予算で制作されたが、89年度カンヌ映画祭グランプリ・主演男優賞・国際批評家協会賞、89年度USフィルム・フェスティバル89観客賞、89年度ロサンゼルス映画批評家協会賞・主演女優賞、サンダンス映画祭観客賞を受賞、89年度アカデミー賞・脚本賞候補にもなった。ソダーバーバーク監督と、ジェームズ・スペイダーを一躍有名にした映画である。 この映画、確かに暗い。告白ビデオ撮影でしか満足を得られない男が主人公の深層心理探りあいみたいな映画ではあるが、主人公グレアム(ジェームズ・スペイダー)の部屋のカーテンがカーテンレールを通さずに窓に貼り付けてあったり、がらんと何もない部屋の一箇所だけに物が集まっていたり、アン(アンディ・マクダウェル)が尋ねてきたときにグレアムがアイスティーを作ってあげたり、グレアムは常に黒いシャツを着ていたり。。。細かいディテールが実に好きで、ソダーバーグ監督って人は、好きなタイプの映画を作ってくれそうな予感がしてわくわくしたのを覚えている。 すぐに「KAFKA 迷宮の悪夢(1990)」なんていうまた変な映画を撮り、そう来たかぁなんて思ったが、その後、意識していなかったせいもあるが、ソダーバーグ監督の名前を見ることがほとんどないまま数年が過ぎた。 そして、「エリン・ブロコヴィッチ(2000)」の監督がソダーバーグと知って、あれ?私の知ってるソダーバーグと同一人物?と疑った。なんか、想像と全然違う映画撮ってるな。。。これが感想だった。そして「トラフィック(2000)」も監督し、アカデミー賞・監督賞にダブルノミネート、「トラフィック」で監督賞を受賞してしまった。うーん、「トラフィック」は確かにちょっと変わった映画ではあったものの「エリン・ブロコヴィッチ」も「トラフィック」も俳優の並べ方がどうも納得できず、頭から”?”がずっと消えなかった。 そして「オーシャンズ11(2001)」、「オーシャンズ12(2004)」と来て、あ、もう完全に違う人かも。。と顔写真を検索してしまったほどなのだ。 これが私の持っている若かりし頃のソダーバーグ君。 どうやらカール頭の分量を減らすと今世間で有名なソダーバークさんと同一人物のようです。。 そうか、同じ人なんだ。 でも、25歳のソダーバーグ君は、本当に今撮ってるような映画を撮りたくて映画作っていたのだろうか?私の持っている資料によると、「SEXと嘘とビデオテープ」の主人公グレアムがずっと映画の中で黒いシャツを着ているのは、この役ととても近かった頃のソダーバーグがいつも黒シャツを着ていた話をジェームズ・スペイダーが気に入って映画でも使った。というのだ。 あの映画に近かった。。だったらメジャー映画色ばりばりの今の映画は趣味と違うんじゃないかな?もう一つちょっと気になるのは、ソダーバーグの映画はいつも俳優が同じ顔ぶれであること。有名俳優がギャラは要らないから出して出してと要望が殺到するというのは知っているが、それにしても顔ぶれを見ると、またソダーバーグの映画だね?なんて分かってしまうなんてつまらない。本来の彼なら、ジェームズ・スペイダーを見出したように、有名な俳優を使わなくても印象に残る映画を作れる人なはず。どんなに華やかな映画を見ても、ソダーバーグの抜け殻を見ているような気がしてならない。次こそは?そう信じて、魂が戻ってくるのを待ち続けるのだ。 この映画、ただのスカシた金髪金持ち役の多かったジェームズ・スペイダーの本来の持ち味をやっと世に出した映画だったのだが、ジェームズも残念ながらその後よい作品に恵まれていない。最近TVドラマ「ザ・プラクティス」で復活を果たしたなんて言われているが、私はそれは認めないのである。あれは全然彼の味が出てないのだ。スカシた金持ちに戻っちゃってるじゃないか。都落ちだ。彼は、十数種類の仕事をしながらマイケル・チェーホフ・スタジオで演技を学び、78年アクターズ・スタジオに入り、舞台の経験を積んだ苦労人。本気の復活を願っている。彼も、自分の”顔”に苦しめられた俳優の一人である。 「SEXと嘘とビデオテープ」 SEX,LIES AND VIDEOTAPE 1989年 アメリカ 監督・脚本:スティーヴン・ソダーバーグ 出演:ジェームズ・スペイダー アンディ・マクダウェル ピーター・ギャラガー ローラ・サン・ジャコモ
by madonotabi
| 2006-04-12 00:00
| 映画
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